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丸テーブルを囲んで

ボナールの"丸テーブルを囲んで":
現代の住宅へのアンチテーゼ

60代の絵画好きな依頼主。部屋は彼らの意思に反して、モノで溢れ、足の踏み場もない。換気も悪くカビ臭漂う状態。この施主さんがどうしてこういう住まい方をするようになったのか、また彼らに必要なものは何だろうか、と考えさせられた。

現代建築は多様化したものの、目指してきたのは、機能性、合理性、低価格であった。しかし人間は、これら目に見える物質的なことだけでは、満足できないように出来ている。感情やこころの世界をもっているからだ。

無意識に過ごす日常の空間が、我々の感性に響くものであれば、眠っていた感性は目覚め、もっと気持ちよく過ごそうと、自ら環境に働きかけるに違いない。わたしは施主さんと話しているうちに、この方には感性を蘇らせ"生きる力"を体感できるような、設計構想が求められているように思えた。狙いは絵…今回の場合は幸せ感が漂う、ボナールの絵…の構図を意識した構想。

耐震性を高め、躍動感と心地よい変化を感性に与える数々の仕掛け…カーテンBOX、カウンター、振止め壁、天井、斜壁、縦長窓…へと無意識にひとはリズミカルに揺り動かされる…。変化がなく退屈な矩形の部屋に三角形の空間を増設。奥行き感と開放感を味わえる。絵画的手法は一つの例に過ぎないが、適度な造形的変化は人を生き生きとさせる。

"朝、居間に入ると、遠くに光る窓が美しいんですよ。それにここに居ると心地よい風の流れを感じられるんです"と、微笑むご夫婦。もうすっかり昔の部屋の混乱は、彼らの頭から消えてしまったようだ。ボナールの絵のように丸テーブルで、ティをゆっくり楽しむ。

狭かったリビングはウッドデッキへと広がり、隣地境界に設けた背の高いガリバリウム擁壁までが、ひとつの部屋の広がりと感じられる。屋根のない半外空間で、植物を育てることが、施主さんの新たな楽しみとなった。

  
    
キッチン&リビング  
 
キッチンと収納  
ウッドデッキと擁壁