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WHAT HAPPENED TO ME 

設計者であることを問い直した時
熊本地震
壁の強度が足りず、1階の柱が倒れて建物が倒壊 

01

巨大地震との遭遇
躯体構造の強化

1995年、それまで身に付けてきた経験が、根底から覆されるような事件が起こりました。阪神淡路大震災です。当事M不動産系列の建築計画研究所にいた私は、会社の調査団として、被災した直後に現地に入りしました。

地獄のような惨状、とりわけ築年数が浅い木造住宅の倒壊を目の当たりにして、身体が震え、しばらくは設計も手に付かない状態でした。

地震国日本にいることは、設計者であるわたしにとって、新築既存住宅を問わす、対策を講じるべきテーマとなりました。木耐協(全国初のコンピュータ解析による耐震診断、耐震補強を普及)の活動に参加し、わたしの集めた約500棟の診断、補強工事のデータは、協会を通じて国交省にあげられ、その後の政策に役立てられています。

建前
これはイメージです。技術力のある業者による建前風景。 

02

施工業界の現実
「設計工房」の始まり

大地震からまもなく、自邸建設の折に、イヤというほど業界の現実を知ることになりました。依頼した施工業者は、それまで何度か仕事上の付き合いがあったのにも拘わらず、見積もり漏れ、積算ミス、施工ミス、手抜き工事の押し付け、挙句の果ては現場監督が図面を読み切れず、わたしが大工に直接指示を出すありさま…。

結局この現場で、わたしは「設計者」「施主」「現場監督」の3役をこなすことになり、設計事務所の枠を超えて、現場の内部に入らざるを得なくなりました。この経験を通して、ハードではありましたが、家づくりを多方面から見直すことができたのは幸いでした。

最近では、コスト削減の圧力から現場管理がおろそかにされる傾向があり、憂慮しています。図面をよく見ず、自分流の施工しやすいやり方で納め、壁を塞いでしまう、ということは残念ながらよく見受けます。そのため、近距離の場合は、わたしは設計監理だけではなく、できるだけコスト調整しながら工事管理もすることにしています。それだけ関わらないと、施工者には、設計の意図がなかなか伝わりにくいからです。これが「設計工房」の始まりです。

考えてみればギリシャのパルテノン神殿の設計者や、最近ではアントニオ・ガウディも建築家であると同時に工事の指導監督でもありました。彼らは構想を設計図に起こしながらも現場を職人に任せることなく、職人と一緒になって、試行錯誤を重ねました。それが結果として、細部に至るまでイキイキとした美しさとなり、時を超えて人々に感動を与えているのだと思います。予算の関係もありますが、彼らと同じように、設計だけではなく、現場を通して家づくりしたい、と考えています。

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